「しゃんしゃんしゃん」
これ…か。リビングで唐突に聞こえた金属音。
少し遅く帰宅しいつもの発泡酒を開けようとすると、子どもたちが口を揃えた。
-何回か鈴の音がするん。
-鈴?鈴ってなに。
とちょうど聞き返してたときのこと。どこから鳴るのか何の音なのか、ただただ混乱し答えが出ない。しかも皆に聞こえている。鈴というか、おもちゃのタンバリンのような、かなりはっきりとした音。何もないところから聞こえた。気のせいじゃない。次はどこから聞こえるのか。身構える。2人ともすっかり怖がっている…。
とにかく一缶飲み干し外に出る。誰かいるのか、時々なのは歩き回っているのか、何だ何なのだ。ライトで地面や家の壁を照らしながら家の回りを歩く夜10時。…しかし異常はない。しかも外では聞こえない。その間リビングにいた息子は4回聞いたと言う。やはり中か。
最初に疑ったのは猫。鈴を付けてる黒猫が音もたてず彷徨いているか。だがそれならだんだん音が近づいてくるはず。猫避けを撒きつつ家に入る。
やっぱり外じゃないよと話してると、また鳴った。近い。食器棚。本当にすぐ目の前で音がする感じ。何もないすぐそこで。しかもはっきりとした音。
リビングの明るさが何も照らさない、一度に恐怖を感じ鳥肌が立つ。まさにぞっとした。鈴の音?鈴踏んでる?鈴虫がいる?-何の音だ。子どもたちを2階に上げ、さらに粘ることにした。
何度か聞いてると寒気もするが、少しずつ慣れてきた。次に考えたのは、食器棚の裏に鈴が落ちててそこをゴキブリが通っている説。最近G見たし、そう思いたい自分もいる。食器棚の裏をシューッとしたい。
「しゃん」
今度は一回。短い。そして不規則。また近くだ。何だ、一体。何だかわからないのにはっきりした音、これが本当の恐怖だと思う。
Gならコンバット仕掛けるか、いや最早他の生物か、ネズミか、鳥か。まさか本当に◯ルター◯イストか。おい…
安心して暮らしたいから、収まらなかったら住宅会社に相談するか親に半日居てもらうか、なんて本気で思う。
何かいるはずとまずは炊飯器の乗った台を動かした。その台が微かに動く瞬間、あの金属音の鳴りかけのような音がした。…そうか。もしかしたら保温状態だったから時々電源が入り、その時の振動で内蓋か回りの金属を揺らし、万分の一の確率であんな音になった…としか思えない。
苦しい仮説を立て、炊飯器の電源を切る。
証明はできてなく偶然にもあれから音がしないが、やはり炊飯器なのか。台を手で揺らしても再現できないが、あの音は間違いなくリビングの角ではっきりと鳴ったその音の断片。
結局翌朝以降文字通り鳴りを潜め、日常は戻った。結局偶然が重なった結果、なのかなあ。
ただ本当に、ものすごいリアルで近くてはっきりと聞こえる音。とにかく怖かった!(録音しておけばよかった。そして一切伝わらないのが悲しいが)