コシトタニマトマルイスト

やっぱり旅に出たいCW/CD系会社員の、すべて独り言。

企画とは

今日初めて、真備に入った。

この街との関わりは20年を超す。まだ結婚する前、家内の実家に行って以来だ。その街に降り掛かった未曾有の災害。向き合えない自分がいた。義母が無事だとわかってからも、報道のせいだけではなく、本音で言えば避けていたのかも知れない。

 

営業と2人、慣れ知った道を進み橋を渡る。視界に飛び込んでくる災害ゴミの山。3週間経ちある程度整理され、週末の台風の後でさえ砂っぽい景色、そこまで水面が来たと思わせるその何か。やはり…想像以上だ。脳が拒んでいる。世話になったバイク屋では、主人が泥だらけのアドベンチャーを洗っていた。

 

メインの国道から一本。ナビを頼りに向かったのは避難所になっている小学校。それでも元気に片付けている人がいる。狭い路地。ここも、そこも、理屈で知識でわかっていても、どこまで行っても壊された街。自衛隊車両を見ると涙が出るようになった。

 

小学校に着く。整備されたグラウンドの駐車場。今日は快晴。ここにコミュニティがある、生活があるんだと思うとまだ想像がつかない。体育館からたくさんのエアコンが出ている。高知県小金井市、県外からたくさんの方。

 

災害以降いろんな事を考えていた。いろんな言葉を書いた。何かすべきだと思った。そして、今日はとある企画の実現に向け、実際現地ではどう考えているか何を感じているかを知ろうとやって来たのだ。色々な方に声をかけ、知りうる限りの情報を仕入れ、細々調整をしながら、かなり固めてきたつもりだった。ところが。

 

会議前で忙しい校長先生からはあまりいい感触が得られなかった。教頭先生には一から説明するものの、実際子どもたちへの教育支援を行っている図書室へ行ってみては?と言われ、そこでも教育委員会の方が当番でいらっしゃったが、こちらの風体から怪しまれるばかり。そしてボランティアにたまたまいらっしゃった県議に詳しく話を聞けた。それでも。

被災地の現実、それはまったく自分の考えの及んでいない世界だった。綺麗事も大義名分も通用しない。理屈は素通りし、机上は空論だった。魅力とは、価値とは、企画とは。

結論から言うと、根本となる思いには同意頂けたものの、本当のニーズと、思いつきに等しいアイデアは一致しなかった。そして被災地の為であれば、急いでことを進める必要も微妙な価値観を無理して追い掛ける必要もない。

 

それでも折角来たのだからと校長先生の会議が終わるのを待つことにした。外の日陰で待つ。それぞれ役割があるらしい。出来始めたコミュニティで、安定を築き始めたところか。一日も早く抜け出したいだろう、一時的な日常。窓ガラスに貼られた「頑張ろう」の文字に涙が出る。たまらなかった。頑張っている人しかいない場所で、頑張る他ない場所で、頑張りたくなくても頑張ろうと言う他ない現実。ここで暮らすことなんて、想像どころか、現実だとすると―。

 

再度校長先生と話をする。もう結果は明確だった。気持ちは分かる。必要なことだとも分かっている。でも。…よかった。踏ん切りがついた。こうして現場で聞けて良かった。遠慮無く、否と聞けて。収穫も大きかった。タイミング、ニーズ。業界のためにも被災者のためにもその他の多くの方のためにも、そして会社のためにもならなければならない。

 

やはり企画は現地でやるべきだ。そしてこのチャレンジは正解だった。思い、考え、動いてよかった。

 

それが、自分の使命だと思って。