コシトタニマトマルイスト

やっぱり旅に出たいCW/CD系会社員の、すべて独り言。

【旅日記・4日目】~奇跡の四国、最後の夜

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8月12日午前5時起床、快晴。昨日から風が強く涼しい。この快適な小屋をはじめ、必要なものがごく狭いエリアに揃っていたのはまさに奇跡だ。昨晩の強い風はそのまま雲を動かし、また山の天気もあいまって夜半に雨が降っていた。念のためと、バイクごと屋根の下に入れていて正解。そしてこの小屋のベンチ! 野宿にはたいへん重宝した。

ただまあ、水場(白川水源)ということもあり、夜中も割りとひっきりなしに汲みに来ていた。若い6人組位のサーフィン帰り?が来たときはどうしようかと思ったが。また、夜中じゅうハーレーのバリバリ音が聞こえていた気がする。夜走りなのか野宿場探しなのか。

とりあえずパッキングを済ませ、7時半出発。と、ここで問題が。リアのスプロケの内側に張り付いているゴム(すいません。無知で)が、半分ほど無くなっていることに気づいた。元々は全部あったのだろうが、意識したこともなかった部分。これがどうなるのかもわからず、一瞬困った。出発前にレッドバロンでツーリングサービスの申し込みをしていたので、何かあったら呼ぼうかと。いつ取れたかによっては、昨日も割りと走っているし…。そういえば、昨日の高速走行中にぺたぺたと音がしたのを思い出した。じゃまあ、結構乗れたんじゃんというわけで、やっぱり出発。

綿密な朝の計画を立てて実行。まず、コインランドリーへ行って昨日の洗濯。で洗っている間に、昨日入らなかった風呂に。K君には2箇所教えてもらっていたのだが、そのうちの最初の「四季の森温泉」に行った。誰もいないと思ったら、ハーレーたちがぞろぞろ。すごいね。とてもきれいで400円。雄大阿蘇を見ながらのお風呂は最高だった。で、またコインランドリーに戻り乾燥させている間に、向かいのローソンで朝食を買い込み、コインランドリーのベンチで食べた。完璧。

空気が格別なだけに、全国共通の味も一層おいしかった。ごみの処分してさあ、と思ったらコインランドリーのおじさんに声をかけられた。正直、恐い人かと思ってしまったのだが話してみると本当にあたたかい九州男児というか阿蘇男児というような方。浅黒く日焼けして精悍な顔つき。もう息子が20歳らしいのだが、バイク乗りだったようでアフリカに興味津々。またいつか大きいのを乗ってみたい…など話も弾み、出発は大きく遅れた。でもこういう出会いってソロならでは、予定が未定だけの特権だとつくづく思う。

 

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(そうそう、このローソン南阿蘇白水店は木造で、全国に3つしかないとのこと。新しくできたようで、訪れる人がよく写真を撮っていた。)


今日の目的は、愛媛の友人Y君に会うこと。実は昨日K君に会ったとき、Y君にメールを送っていたらしくK君に電話がかかってきて、直接話すことができたのだ。この3人、そして初日のM君ことみーたんは同じ大学の同級生。しかも今日会う予定のY君、彼とは深い縁が…。もう少し近づいたら連絡するということで、昨日は電話を切ったのだがさていかに…。

というわけで、まずは阿蘇を回るべく県道39から県道111へ。山上まで行くと激しい強風とガスで、はっきり言って危険な状態。バイクはどんどん来るが、さっさと下りることにした。再び県道111からR212に入り、大観峰へ。ところが、ここはもう人が多いなんてレベルではなかった。バイクにいたっては、これまで見たこともない密度と台数で旅心が一挙に萎え、またしても下りることに。さらに県道45(ミルクロード)から県道11(やまなみハイウェイ)へ。途中のドライブインみたいなところ(ド忘れしたが、すごく大きなGSやらコンビニなんかが固まってる施設)で、休憩。バイクだらけだったが、BMW乗りの方としばし話す。結構峠向こうは荒れ模様らしい。ちなみにここで、BMWのアドベンチャー発見。念のためレイン上を着て出発(下は全天候モトパン+MXブーツ)。R442で一路竹田へ。天候もそれ以上崩れることはなかったので、ひと安心。

 

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…まあ、阿蘇はすごかった。とにかく凄かった。もう素晴らしすぎて、写真も撮るのをやめたぐらいだ。どう撮っても収まらないスケールと美しさ。それは雄大で繊細。世界に誇ってもいいとは、熊本人の親父の言。山の緑は抹茶アイスのような滑らかさで、雲の白は自ら発光しているような白、空の青は深く明るい。そして影の黒、大きさ、形。ぜひ夏の阿蘇は、多くの方に走っていただきたいエリア。その分ものすごい人なのだが。


R57からR10を経由し、何だかんだごちゃごちゃしながらR197で佐賀関港へ到着。午後3時の出港間際でばたばたしたが、懐かしい港。いつものように乗船完了。早速Y君へ電話。…が、問題発生。実はY君、所用で午後6時には家に戻らないといけないらしい。あ~早くここまでくればよかったか。いやしかし、これでも精一杯だったし、う~ん途中はのんびりしゃべったりしたし、などと思いながらも日を改めるわけにもいかず、とにかく1分1秒でも会おうと約束した。

そして間髪入れず、第2の問題が。昨日の阿蘇からずっと風が強かったのだが、ここが読み不足。強風ということは、海上は大荒れな訳で、船も揺れると。乗りなれた航路な上に、何しろ俺は水産学部だよと思う間もなく、気分が悪くなり座り込んでしまった。ああ、情けない。川が専門とはいえ、沖縄まで漁船でいったこともあったのに…(この時の船酔いは史上最強。4mの波が2~3日続いた覚えが)。

いつの間にか寝てしまっていて午後4時10分、三崎着。四国上陸の感傷に浸る間もなく、R197を突き進む。やっぱり、四国だ。この大きさ、距離感、高低差。実は愛媛にも4年ほど住んでいて、馴染み深い。その後の連絡で、Y君、自宅宇和島をバイクで飛び出しこっちへ向かって走っているという。つまりフェリーに乗る間少しでも近づいてくれたというわけだ。三崎から走ってみて分かるが、宇和島からは決して短い距離ではない。そしてついに、午後4時45分伊方町で合流。というか、道路わきの空き地で、待っててくれた!

何と言っていいか、この男気。昔からそんな奴だった。実は、彼には本当に大きな大きな恩がある。学生時代から変わらぬ風貌と、今だ衰えない強靭な肉体を持った、精悍な先生。そう彼は高校教師。俺が教員免許をとった後、修士に進んだ彼もその道に進みとうとう本物の教師に。この10年の間にあったこと、思い切り凝縮して語り合ったが、たったの30分はあまりに短かった。元忍者乗りはZRX1200に跨り、颯爽と駆け下りていった。ありがとう、Y。俺はいつでも会いに来るぞ!


…語りつくせない時間は儚く過ぎ去り、またひとりの旅人になった。どうしよう。大洲へ出たものの当てはなく、意外にうっとうしい街走りに疲れながら、今日の野宿場探し。街の駅やら四輪キャンパーを多く見かけた河原やらあるが、いまいちだ。相当時間を食い、悩んだ挙句、昔の記憶と野宿勘で「肱川」へと向かう。合併して大洲市になっているようだが、自分にとっては思い出深い場所。そして見つけた「小藪温泉」の文字。ああ、懐かしい。何度ここに入ったか。もう夢中で、そこへ向かっていると見慣れない道の駅が。かつてはなかった、「道の駅清流の里ひじかわ」。ここで休憩することにした。

コンビニ、酒屋など必要なものが全部揃っている。閉店後は完璧な野宿場かも、と期待しキープ。と、今回の旅で初めて、「懐かしい旅人」を発見。旧型DR250Sに透明ボックスの彼は、ベンチで休んでいた。やっと見つけたぞ、お仲間。早速声をかける。…驚いた。何と岩手からで、しかも出発して3日目だという。下道だけでその距離は凄い。もっとも東、北の方はまったく未知の世界なので、より衝撃的だった。30歳だという彼は、DRはもらいものでバイク旅も初めてだという。すごい。こんなチャレンジャー、なかなかいない。しかも午後8時を回っているそのときでさえ、今自分が来たルートを戻るように三崎から最終便ででも九州に上陸したいという。長崎まで行ったら戻るらしいのだが、仕事があるのであと5~6日で岩手という過酷な旅。その後分かれたのだが、無事帰られただろうか。お互い、話ができて楽しかった。

小藪温泉はそこから数km。国道から1本、くねくね山道の途中にある鄙びた雰囲気の老舗だ。真っ暗闇の中、それはあった。実は、とっくに風呂は終わっているのだが、泊り客のためにまだ沸かしてあり、どうぞごゆっくりお入りくださいと。丁寧にお礼を述べると、気を遣わないでください、とご主人。助かるなあ。ありがたいなあ。涙が出そうなやりとりだった。

汗を流し終えると、今日の仕事も終わりの予感。再び道の駅に戻り、今度はテントの準備。幸い建物の裏手は芝生で、死角もたくさん存在し、まさに野宿場。荷物を降ろし、軽い格好に着替え、ベンチの上で缶ビールを開けた。建物のわずかなひさしの下にテントを作り、バイクも屋根の下に。川沿いとはいえ、阿蘇ほど涼しくはない。が、最高レベルの野宿場ではないか?

満天の星の下、眠りについた。
唯一心配なのは、明日の四国の降水確率が100%ってこと。いよいよ明日は、最終日。そしてこれが最後の野宿。最後まで無事に、そして精一杯頑張ろう。

<本日の走行距離:273km>